AFRIKA ROSE & FLOWERS

2019.5.1

表題とはまったく関係のない昔話から始まります。

中学では週1回だけの美術部でのんびりと油絵を描き、高校に入ると手品のサークル「マジック研究会」に入会した。マジック研究会でもカードや小物を使った手品が主体だったので言ってみればどちらも手先以外はほとんど動かさない活動内容だ。

高校のグラウンドで、真夏でもユニホーム姿で猛練習をする野球部、おっそろしい形相の顧問の怒号が響くハンドボール部、サイボーグのようなコーチが指導をしているサッカー部などを見て「ひ弱なオレが運動部になんか入ったら間違いなく死んじゃうもんね」と信じていた。

そんな私が友人の強引な誘いを断り切れずに高2の初夏に入部したのが“死んじゃうはず”の陸上部。同級生はそろそろ部活を止めて、大学受験に備え始めたころだ。

体育の授業でもほとんどビリッケツの鈍足なので“仕方なく”選んだのが中長距離。1500m、5000m走や冬の駅伝だ。それはそれは過酷だった。当然ながら、来る日も来る日もただただ走り続ける毎日。マジック研究会が無い日は、ほとんど帰宅部という軟弱高校生だった私は陸上部のウォームアップでほとんどの体力を使い切り、ちょっと走れば足がつり、本練習に入る頃には喉はカラカラ。「み、水をくれ〜」と心の中で叫びながら後輩のはるか後ろをついていく日々だった。当然ながら地区大会に出てもヘロヘロの周回遅れでゴールする始末。

それでも入部して数カ月がたった頃には「こんなに走っても死んでいない」ことに驚き、さらに「オレってイケてるんじゃない」と勘違いが始まった。こうなるとすべて形から入るタイプの私の思想は危ない。何はともあれ上を向くことだけは得意で「こうなったら、まずは“世界”を見なきゃいかん」と国立競技場で行われていた陸上大会を“偵察”しに行った。

その時目にした光景は今でも忘れない。

5000mのレースだったかと思う。先頭集団で走る3人のランナーは私の全速力よりもはるかに早いと思われるスピードでバックストレッチを駆け抜けていった。まったくもって息が苦しそうにも見えない。カモシカのように細くまっすぐ伸びた足。陸上雑誌で“これが理想のランニングフォームです”と称さるような美しい走り。褐色の肌に鮮やかな黄色や真っ赤なランニングギアーが眩しく、とてつもなくカッコ良かった。ケニアの選手達だ。その瞬間から「ケニア=美しく走る長距離選手」という印象が心に焼き付いた。

ここまではおバカなジジィの思い出話です。

そのケニアがバラの生産量で世界のトップクラスであるということを知ったのは高校卒業から40年程経った今から2年前。広尾散歩通りにある薔薇専門店「AFRIKA ROSE」で教わりました。フェアトレードの考えに基づきケニアのバラを専門に扱うオシャレなお店。幅広いファンを持ち、メディアにも度々登場する有名店です。

こちらのバラは標高2000メートル以上のところで栽培されているらしく、朝晩の寒暖差が激しい為に色づきが鮮やかで、生命力が強いと聞き「力強く美しい」ところはランナーと同じかと。ケニア長距離の強さの大きな理由も酸素が薄い高地で育ち、練習しているからですものね。

先月、その「AFRIKA ROSE」が六本木に、それも六本木ヒルズに2号店「AFRIKA ROSE&FLOWERS」をオープンしました。

店舗があるのはテレビ朝日に面する毛利庭園と同じグランドレベル。「サルヴァトーレクオモ」の並びです。白い壁には映像が映し出され,直線的なデザインの店内は力強いアフリカのバラが持つ鮮やかな色彩と個性的なグラデーション柄を一段と際立たせていました。六本木ヒルズ店はバラをメインに、季節の花々や緑、ローズティ、キャンドルに花器も取り扱っています。

私の注文にイケメンデザイナーの田中さんがすっ、すっとバラを選んであっという間に素敵な花束を作ってくださいました。

英字新聞に包まれたお洒落な花束を持って夜の六本木を歩くのは初めての経験。還暦を迎えたオヤジが言うのも何ですが「なんだかオトナになった」気分でした。

2年前、お店の方に勧められて、「愛妻の日」(だったかな?)に広尾本店で買った3本のバラを「これまでの20年間の数々のご無礼とこれからも基本的には変わらない私を許してくださいねバラ」として結婚後初めて女房に贈りました。

今回はその時以来の花束贈呈。

はたして花束を見た女房の反応も2年前とまったく同じ。

「あれ、その花だれにもらったの?」

「・・・・ あの~・・ 買ったんですけど」

ケニアのバラはそれから2週間に亘り元気に玄関を彩り続けてくれました。

そう言えば、AFRIKA ROSEの並びで営業していたイタリアンレストランも、最近、山梨県の小淵沢に大きな2号店をオープンしたとか。オーナーの丸原さんは「料理を通して広尾と山梨の懸け橋になりたい」とおっしゃっていました。立派です。

近いうちにぜひ訪ねてみたいと思います。

by  Oyaji-M

 

 

 

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